ヨタ話

無名アニ関民のアニメ&映画ライフログ

サマーウォーズ

 ネタバレ有。
 試写会で見てきました。細田守監督は「時をかける少女」完成直後からこの作品の準備に入ったらしいが、その3年間のエネルギーが詰まった作品。「傑作」「名作」という接頭辞がついていいし、細田監督は「時かけの〜」ではなく「サマーウォーズの〜」と言われるようになるのでは。
 エンタテインメント性、ドラマ性を兼ね備え、群衆劇としても主人公健二の物語としても面白い。出てくる陣内家ご親戚は健二があ然としてしまったのがうなずけるほどの大人数だが、この人々がそれぞれ個性を発揮して見せてくれるので、終わるころには誰がどういう続柄だったかなんとなく覚えられるという寸法。健二だけがせかせか動き、親戚は脇役らしい動きをするのかと思いきや、みんな自分の持ち場で最大限の動きがあるため画面から目が離せなかった。かといって息が詰まる作品ではなく、親戚が集まり始める前半はもちろん、後半で家にスーパーコンピュータを持ち込んだり漁船を持ち込んだりするくだりは試写会でも笑いが巻き起こっていた。陣内家を10年も遠ざかっていた養子の侘助が開発した
「ラブマシーン」が仮想世界OZに大混乱をもたらし、健二たちはラブマシーンとの戦いに向かうわけだが、戦闘準備はなんとなく「ぼくらの7日間戦争」で教師たちの突入に備えて罠を仕掛けている子供たちを思いだし、あの映画を観たときの胸の昂ぶりと同じものを感じた。陣内家の人々は武田に仕えた血がそうさせるのだろうけれど、こちらまで伝染してくるようだった。
 健二たちの身に降りかかった事件と、了平が上田高校を率いて戦っている高校野球の展開がリンクするのもまた面白いところ。健二たちがラブマシーンに負けるとはみじんも考えなかったが、上田高校が長野の強豪として知られる佐久長聖松商学園に挑んでいるのを見るとまさか……ってところがある。
 最も驚いたのは栄が亡くなってしまったこと。健二との花札勝負に勝って夏希を託し、心配することは何もなかっただろうけれど、てっきりおばあちゃん中心に陣内家が団結していくものだろうと思っていたから、作品のもう一人の主人公が居なくなってしまったような喪失感だった。しかし、実際はおばあちゃんの見せた「励まし」と、家族の絆が生きてくるのはここから。ラブマシーンとの決戦は4億ともいうアバターがふわふわ浮かぶ中で行われ圧倒的な迫力だった。残念だったのは、OZ内の掲示板ツリーが伸びていく様子や個々のアバターなどに至るまでむちゃくちゃ細かく描き込まれているため、試写室のスクリーンでは描写し切れていなかったところ。これはぜひ劇場の大スクリーン、あるいはBlu-ray+大型ディスプレイで楽しみたい。
 笑い所、泣き所、見所が多く、むしろ「いろいろぶち込みすぎだ」と批判されるかもしれないぐらいにサービス精神旺盛な作品なので、この夏にぜひ見ておきたい映画の1本。ちなみに、すでに前売券は買ってあるのだ。