「時をかける少女」「サマーウォーズ」と、いずれも日常に非日常が溶け込んでいたけれど、この作品の場合は、2人の子供が“おおかみこども”であるという点以外はわりと普通というか、むしろいかに日常として描いていくのか、みたいな感じがある。ダンナはあまり予告編にも出てこなかったから、シングルマザー的な話になるのだろうと思ったら、本当にシングルマザーだった。
サマーウォーズを作ったとき、ちょうど細田守は結婚して嫁の実家に行ってみたら陣内家みたいな山ほどの親戚がいてびっくりした、みたいな話をしてたが、今回はさては子育てにヒントを得て作ったのだろうか。雪と雨よりも、子どもたちを支える母の姿に一番力が入っていた。この宮粼あおい演じる母親・花が、とにかく強い。最初はちょっと足りん子かと思ったけれど、オオカミの姿の子供が生まれてくるかも知れないと考えて産婦人科に行かず助産師の手も借りずに自分と夫だけで子供を2人産み、夫がいなくなってからは都会の厳しい環境の中で子育てを続け、それが難しくなると田舎への移住を決めて、きっちり小学校にも通わせたんだから。「いかにもアニメ映画」って作品ではなく、ドラマの脚本をアニメで表現しているというか。
子育てのしんどさと同時に、親がいかに子供を愛しているかも描かれていて、独身な人はキュンと来てしまうのでは。いや、来る。あとケモノ度合いが高め。雨はもうちょっとかっこいいオオカミの姿でもよかったかと思うけど。
追加：花が雨にばっかり構い過ぎ、はたしかに思った。でも、母親って下の子に構いたがるし、雪が小学校で「女の子らしさ」を学ぶまでは、雨が虚弱な子だったから……しょうがないね。だが「あのワンピースでどれほど救われたか」ってモノローグはあったが、最後も結局、花はすぐに雪を迎えに行ってそれから雨を探すのではなくて、山の中へ消えた雨を探す方を選んでいて、雪ちゃんグレて家を出てしまうんじゃないかとは心配した。花は雨の中に彼を感じるところもあったのかしら。
