ヨタ話

無名アニ関民のアニメ&映画ライフログ

マイマイ新子と千年の魔法 (2009)

 おでこにもう一つつむじ(マイマイ)のある青木新子は、自由に空想を膨らませることができる女の子。自分の住んでいる「国衙」がかつては周防の国で栄えていた場所だったと聞くと、千年前に牛車が進んでいた様子や人々がたたらを踏んでいた風景がありありと描けるのだった。そんな新子の学校に、東京から島津貴伊子が引っ越してくる。天候初日に香水をつけてきて浮いてしまった彼女に興味を持った新子は、お互いの家を訪れたりするうちに仲良くなっていく。新子たちは桑畑を流れるせせらぎをせき止めて遊んでいるときに真っ赤な金魚を見つける。学校の美人教師であるひづる先生の名前をつけ、みんなで可愛がっていたが、池を彩るためにと貴伊子が沈めていた母親の香水のフタが開いて、ひづるは死んでしまった。しかし、シゲルがひづるにそっくりな金魚を別の川で見たというので、一同で探しに行くことに。探せどもひづるは見つからず、みんなが意気消沈しかけたそのとき、タツヨシは父の竹刀にかけても明日はみんなでひづるを見つけて笑おうと元気づける。一度はバラバラになってしまったみんなの心はそれで一つになった。しかし、警察官であったタツヨシの父は悪女に引っかかって自殺してしまい、タツヨシは新子にもう明日の輝きはないのだと告げにくる。そんなタツヨシに、新子は父の仇討ちをしようと持ちかけ、二人で盛り場へと向かう。
 舞台は昭和30年代の山口県防府で、かなりしっかり考証されているのか、そんな時代には生まれてないのにノスタルジーを覚える。日常描写も細かくて、昭和30年代の生活がありありと浮かんでくるかのよう。このあたり、宮崎駿のもと「魔女の宅急便」で演出補をしていたという片渕須直監督の腕か。キャラクターデザインも相まって、言われなければマッドハウス作品だとはとても思わないような作品。仲間たちが結束を固めるまでにけっこう時間を使った丁寧な作りで、タツヨシと新子がバー・カリフォルニアに殴り込みに行く展開も人情話で落としており、ジブリと同じ大人から子供まで楽しめる作品だと思う。惜しむらくは宣伝不足。事前宣伝は劇場予告中心で、あんまりテレビCMが流れているのは見なかったためか、公開日がマクロスFと被ってしまった不運(また、客層の被るプリキュアの裏上映でもあった)もあって、初日初回にもかかわらず総観客数30名程度という入りだったのは残念すぎる。「となりのトトロ」とか「おもひでぽろぽろ」回想シーンとかが好きな人は見に行くとよいです。感じとしては明るい「火垂るの墓」的。
 追記片渕須直監督は「BLACK LAGOON」の監督でもあった。なるほど、新子とタツヨシの殴り込んだ繁華街はロアナプラだったわけだ。かなり納得。