ヨタ話

無名アニ関民のアニメ&映画ライフログ

劇場版“文学少女”(2010)

 井上心葉は、木蓮の木の下で天野遠子と出会う。本のことを好きすぎて「本を食べてしまう」という彼女の秘密を知った心葉は文芸部に入部し、彼女のために”おやつ”を書き続けることになる。出会いから約2年が経ち、遠子の受験が近づいてきたころ、文芸部の設けているポストに謎の投書があった。手紙には書かれていたのは、宮沢賢治が詩の片隅に書いていたという落書きだったのだ。遠子と心葉は、その手紙の真意を知るべく図書室へ向かうが、宮沢賢治の本に近づいた心葉は顔色を変えた。やがて、投書の主は心葉のクラスメート・ななせと一緒に図書委員をやっている竹田千愛だとわかるが、千愛は「手紙は井上ミウから」と心葉に告げる。それは、かつて心葉が新人賞を取ったときのペンネームだった。
 原作1巻ではなく、だいぶ後半になってからのエピソードをアニメ化しているために、本来であれば色々と積み重ねがあったであろう心葉と遠子先輩との間の関係はすっ飛ばされていて、「なに、二人付き合ってないの?」みたいな、ね。それにしてもヘビーなエピソードを選んだもので、重くて暗く、それをひっくりかえすカタルシスはなく、作画アニメでもなく、音楽アニメでもない。ファミ通文庫10周年記念か何か知らないけれど、もう少し面白いエピソードを選ぶことはできたのではないだろうか。第1話の冒頭と2クールのラストエピソードだけを見せられた気分。重苦しい話であろうとも感動なり何なり持って行くことはできるはずで、それがなければ何のために映画を観に来たんだかわかりません。
 ななせ(CV:水樹奈々)と美羽(CV:平野綾)のガチバトルは、決して報われないサブヒロインvsヤンデレの、どっちが勝っても得しないバトル。平野綾のキレキレ演技で美羽がマッドなキャラに仕上がっているわけだが、この美羽の存在が映画全体の空気を重苦しいものにしている。主人公である心葉がななせの味方をせず美羽に流れてしまうところは、過去を踏まえれば心葉にはそれしかないんだけれど、観ているこちらの心理とは逆に向かってしまい、あんまり愉快ではない。ななせ報われなさすぎ。
 遠子先輩は反則クラスの無敵キャラとして描かれているだけに、最後まで鉄壁でいて欲しかったなぁ。