ヨタ話

無名アニ関民のアニメ&映画ライフログ

ハート・ロッカー(原題:The Hurt Locker、2010)

 2004年のイラク。爆弾処理班ブラボー中隊に所属するサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は上司を事故で失い、隊に新たにウィリアム・ジェームズ二等軍曹が赴任してきた。ジェームズは遠隔操作ロボットを出そうとするサンボーンを制して工具のみで爆弾処理をやってのけ、翌日には防護服を脱ぎ捨てて自動車に取り付けられた起爆装置を解体するというルール破りの行為ばかり繰り返す。怒るサンボーンだったが、ジェームズはこれまでに873個の爆弾を処理してきたと語る。しばらく経って、砂漠での任務を終え帰還するブラボー中隊はパンクして立ち往生する味方を発見。敵を護送中だというその仲間を助けようとしたところ、テロリストの襲撃を受ける。辛くも持久戦を制した中隊は、そのストレスを発散するかのように飲み明かす。さらに後日、中隊は現場にも出てみたいという軍医ケンブリッジを連れて不発弾処理に向かう。建物のなかでジェームズが見たのは、基地近くでよくモノを売っているベッカムという少年らしき遺体が人間爆弾にされた姿だった。体内の爆弾を取り出して遺体を運び出すジェームズだったが、周囲を警戒していたケンブリッジがテロで殉死する。その夜、緩衝地帯での爆破事件に駆り出されたブラボー中隊。ジェームズは自爆テロではなく犯人は逃走したと断定して町中を捜索するが、逆にエルドリッジが足に重傷を負ってしまう。ブラボー中隊の任務明けまであと2日というところで、市街地に体中に爆弾を巻かれた男が現れる。シャツの下には体にがっちりと固定された爆弾が大量に見つかり、ジェームズは防護服を着て男を助けるべく爆弾を調べるが、とても爆発までに解除できるものではなかった。
 アカデミー賞で「アバター」の前に立ちはだかった作品だが、その内容はなんともドキュメンタリーチック。エンターテイメント作品というよりは、アメリカ軍の現実を(脚色しつつ)伝える映画だったような気がする。イラクでやって来たことを反省しているわけではなく、テロリストはこんなにも非道いことをする、それにアメリカ軍は立ち向かっている、という主張が強い。中盤の、砂漠での戦闘は娯楽映画ならカットされるだるさ。しかし、遮蔽物のない砂漠での戦闘がいかに苛烈なものかはよく伝わってくる映像だった。スナイパーの描き方(弾着確認はパートナーが行う、スナイパーは撃つだけ)は娯楽映画では見られないもの。
 何よりエンタメじゃないなぁと思うのはラストで、ブラボー中隊の任務が開けたジェームズは妻と子の待つ家へと帰るわけだが、スーパーマーケットでずらりと並んだシリアルを前に呆然と立ち尽くし、子どもに絵本を読みながらなにかふわふわとしている。どうしたのかと思ったら、次には再びイラクへと出撃している。防護服なしで突っ込んでいってたのは度胸があるとか、すごい腕があるとかではなくて、もうそういう病気の人だったんだなと。戦闘中毒(ウォーホリック)とでも言うのか。このあたりが、アカデミー賞の理由なのかも。