「スノーマン」「エセルとアーネスト」のレイモンド・ブリッグズによる原作を、実写やストップモーションも織り込んだアニメ映画に翻案した作品。日本語吹替版は演出を大島渚が手がけ、ジム役を森繁久弥、ヒルダ役を加藤治子が担当。
「お上の言うことだから」と、適切なのかどうなのかわからない政府作成のガイドブックに従って屋内シェルターを作り、実際に爆弾の投下があったあとも、ガイドブック通りに助けを待ちつつ日々の暮らしを続ける。
作中で発生する大きな事件といえるものは原爆の投下のみで、ほかは、ただただジムとヒルダの日々が描かれる。被爆後はラジオも聴けなくなっているので、もはや新しい情報が入ってくることはなく、ただただ「こうなんじゃないか」と憶測を述べるだけのジム。そして、被爆前からゴシップにしか興味はないと言い切っているヒルダ。悪い人たちではないのだが、助かりそうな道筋が何一つないところへ突き進んでいくつらさよ。