クライマー、アレックス・オノルドがエル・キャピタンに「フリーソロ(器具を用いない単独登攀)」で挑む姿を描く。「MERU/メルー」のジミー・チンが監督。
オノルドは2012年にエル・キャピタンで最速登攀記録を打ち立てていて、2009年以来「いつかは」と思い続けているエル・キャピタンのフリーソロに向けて鍛錬を欠かさない。その姿を、恋人であるサンニや、登攀パートナーらの目を通して描いていく。
無論、オノルドが登るのは「そんなところ、ロープなしでいけるの?」と思うような絶壁で、映像の迫力はすごい。……しかし、いざフリーソロへの挑戦がなかなか始まらない。実際、本番のフリーソロは無事に事故なく成功し、しかも4時間を切ってるので、2時間弱の映画にするにはその他の素材が大量に突っ込まれるのはわかっていたし、命をかけたフリーソロに挑むには奇人の域にあるオノルドといえども、そうそう踏み出せなかったということではあるのだが。
そして、ドキュメンタリーであって、わざわざドラマティックにしているわけではないとは思うが、恋人・サンニの足の引っ張りっぷりがすごい……。相棒のトミー・コールドウェルいわく「オノルドは落ちたことがほとんどない」という人物なのに、サンニと山に行ったときに2度滑落。1度はサンニの器具操作ミスで背骨の圧迫骨折、もう1つは「気付いたら落ちていた」で足首捻挫。明らかに「呪いのアイテム」。ヴァサルヘリィ監督は「あなたがいなければ、映画はつまらないものになっていた」とアカデミー授賞式でコメントしたそうだが、アクション映画でよく見かける「足を引っ張るだけのトラブルメーカーキャラ」で、現実をそのまま映画にしただけと言われればなにも言えんけども、モヤモヤ。