ヨタ話

無名アニ関民のアニメ&映画ライフログ

#11 四畳半紀の終わり<終>

 四畳半に囚われの身となった“私”は占い師であれば「好機は目の前にぶら下がっている」と言うだろうと自嘲、もしも新たに行動を起こせるのであれば今度こそは……と誓いを新たにする。そして、もちぐまんを手にした“私”は突如現れた蛾の大群に追われるように、ついに四畳半からの脱出に成功する。時はまさに五山送り火の夜、各所の恨みを集めた小津が賀茂大橋の欄干に追い詰められるそのときだった。
 長い長い時を渡って、とうとう“私”は明石さんを猫ラーメンに誘うという約束を果たしたよ。この感想を書くにあたって通しで2度目の視聴を行ったが、そりゃ確かに同じような筋を辿るだけだから、大きな山場というほどの山場はない。でも、第1話から積み重ねられていたカタルシスの解放、これは本当に快感である。改めて、明石さんはかなり早いうちから“私”に好意を持ってくれていたことにも気付かされ、いったい“私”はどれだけ回り道をしてきたのかと……。
 浅沼晋太郎のはまり具合は、今となっては“私”が浅沼以外では考えられないぐらいのレベル。また、感情をそれほど表に表すことがなく内心を読めない明石さんに坂本真綾という配役はあたっている。吉野裕行=小津は言わずもがな。
 “私”と小津の表裏一体具合が心地よくなってくると、もう何周でも見られる。

#10 四畳半主義者

 薔薇色の学生生活などあるはずがない、と割り切った「私」は四畳半に引きこもって生活することになった。あるとき、そんな生活にも飽きて外に出ようかと思い立ったのだが、四畳半の玄関を開けるとそこにもまた四畳半が広がっていた。窓を開けても天井をめくっても四畳半、あまりにSF的な四畳半世界に「私」は陥っていたのだった。多くの四畳半を横断するうちに、自分が選ばなかった可能性の世界・パラレルワールドの四畳半を横断しているのだと気付く「私」は、同時に、可能性が無限に広がっている=四畳半世界も無限に広がっているということに向き合うことになる。
 これまでは大学に入りサークルに入るところから三回生になって他の生活を選んでいればと後悔するまでの時間を過ごしてきたが、その四畳半を横に見ていくとこうなっていたのか。回想の中で小津も羽貫さんも師匠も登場しはしたけれど、演じたのは「私」だったというのが孤独度合いを深めている。#05 ソフトボールサークル「ほんわか」で登場したひげもじゃの「私」はコレだったのね……。あのときの「私」は絶望に沈み、もし他の可能性を選んでいたらと思っていたけれど、いろいろな四畳半を見た「私」なら、「その世界だって悪くはないよ」と言えたのに。今回の「私」が感じた絶望ほどのものはないと思うよ。

#09 秘密機関「福猫飯店」

 薔薇色の学生生活を夢見て「秘密機関『福猫飯店』」へ入った「私」。まさか秘密機関を名乗ってビラをまく秘密機関があるとは思わなかった「私」だったが、福猫飯店は相沢のもと図書館警察をはじめとする裏家業を一手に引き受ける本当の秘密機関だった。図書館警察に配属された「私」は師匠からの本の取り立てに失敗し続け、次に回された印刷所では(小津のロケット花火によって)顧客に配るためのレポートを焼失、自転車整理軍でも戦力とはならず、しかし小津と親しいという理由でなんとかお目こぼしをしてもらっていた。やがて、小津は相沢を追い落として実権を握り、「私」も自転車整理軍総統の座におさまるが、バードマンサークルの自転車に手を出したがゆえに明石さんにビンタされる羽目に。さらに、相沢の逆襲によって小津が実は可愛い彼女持ちで、五山の送り火を同時に見るために飛行船強奪を企んでいることを知る。相沢らの妨害で飛行船が落ちていくのを見ながら、「私」は自分が灰色の学生生活を送っている間に、小津は幸せな学生生活を送ってたことを知る。師匠に「可能性という言葉を無制限に使ってはいけない」「最初から薔薇色のキャンパスライフなんてなかったんだ」といわれた「私」は、とうとうこの四畳半から出なければよかったのだという考えに至る。
 羽貫さんがいっていたことは本当だったのですね。小津の彼女があのほんわかの小日向さんだったとは。それで、あの方舟(飛行船)強奪に小津が絡んでいたわけか。まさか「私」を助けに来たわけではないと思っていたが、そういう事情であったか。明石さんの主目的がバードマンサークルにあるというのに、そこに手を出してしまった「私」が明石さんと幸せになれるわけはない。

#08 読書サークル「SEA」

 3つのサークルを掛け持ちすることになった「私」。読書サークルはまるで軍隊か寺のように厳しく、息抜きに抜け出したところで、小津が古本屋で買ったが読まなくなったという「夜は短し恋せよ乙女」を譲り受けた。その末尾に「樋口景子」という女性の名前を見つけた「私」は、文通を始めることにする。景子さんは「私」のまさに理想とする女性で、うまく文通を続けていくが、文通が2年に達したとき会いたいと言われるようになる。ちょうど「私」は羽貫さん、そして香織さんとの恋愛双六も上がり寸前。羽貫さんの家のトイレで逡巡した結果、景子さんを選んだ私だったが、待ち合わせをした店はすでに閉まっており、景子さんの住むというマンションへ向かう。その住所に住んでいたのはひどく不健康そうで、まるで海の底からやってきた人の不幸が好きそうな顔をした人物……つまり、小津であった。
 ここまで2回が完全にほぼ同一の筋だからこそできることもあったし、だからこそ見えてくることも。この3回、高校時代の明石さんを「私」が助けていた流れだったわけで、明石さんからみた「私」への友好度は一番高かったわけだよなあ。小津が文通に飽きてからも続けてきたのは明石さんの裁量だったわけだし、もちぐまんとして助けてくれた「私」のことを「かっこよかった」と評してくれているし……。本当にもったいないことを。
 残るは3回。たぶん、あの下宿に吊してあるもちぐまんを明石さんに返すことができればループからは抜けられる気がするんだが、どうにも返せそうな予感がしない。

#07 サークル「ヒーローショー同好会」

 3つのサークルを掛け持ちすることになった「私」。「ヒーローショー同好会」の活動の一環でもちぐまんショーに出演し、ショーを見に来ていた明石さんがからまれているところを助ける。その姿を見た城ヶ崎先輩に、ラブドール・香織の警護役に任じられる。最初は人形を不気味に感じた私だったが、すぐにその美しさの虜になってしまう。しばらくは、城ヶ崎先輩が出かけている間だけ部屋で見張りをしているだけだったが、ある日、何者かが部屋に侵入した形跡があるということで、先輩から香織を預かることになる。
 羽貫さんのときには「好きでもない女性を関係を持つなんて軽蔑するね」と言い放った過去から本能を理性で押さえ込んできたのに、今回は香織さんを抱えて逃げ出してしまうとか、なんという積極さ。ドール相手とはいえジョニーが勝ってしまうなんて……。城ヶ崎先輩が跳び蹴りしてなかったらどうなっていたことか。今度のリテイクは景子さんルートになるのか。師匠と同じ“樋口”って名字なのがすごく気になるよね。羽貫さんの話によると、小津も何か深窓の令嬢に恋して大変らしいけれど、それって小津が深窓の令嬢として(=景子さんとして)「私」とお文通しているということではあるまいな。ここ2エピソードでの小津の活躍具合を考えると、最後にそれぐらいの大活躍を見せてもおかしくはない。
 そういえば、香織の書き置きを見つけたのは小津だが、その表情はいつもの悪魔的なものではなく、普通のキャラクターのものだった。途中で出てきた小津はいつも通りだったが、あの小津はいつもの小津とは別の小津だったのか。もう何が何だか。

#06 英会話サークル「ジョイングリッシュ」

 数あるサークルの中から1つを選ぶというリスクを避けて3つのサークルを選んだ「私」。英会話サークルでは「頭の中は英単語でいっぱいなのに、間違った文法にならないようにと考えて発言できない」といういっぱいいっぱいな状況だったが、文法を全く無視しつつもフィーリングで気持ちを伝える羽貫さんという女性を知り合い、小津という共通の友人もいたことから親しくなっていって、サークルの後にお茶をするようになる。「親しい女性としか飲みに行かない」という羽貫さんにまったく誘われないことから落ち込む「私」だったが、あるとき誘いを受ける。しかしそのとき、「私」には羽貫さんのほか、ラブドールの香織さん、文通相手の景子さんという女性がいて、その日に3人の約束が重なっていた。羽貫さんの約束を選んだ「私」は、城ヶ崎先輩との飲み比べに勝利して羽貫さんとの飲みに付き合い続け、泥酔した彼女をマンションまで送ることに。「イケる!」と興奮するジョニーを抑えつつ頑張る「私」だったが、酔っぱらった羽貫さんに顔面をなめ回され、もはやジョニーの限界に達したため、あわててトイレに駆け込んで閉じこもる。翌日、トイレから出た「私」を迎えたのは小津で、羽貫さんは酔っぱらうと相手の顔をなめ回すクセがあり、昨日のことはさっぱり忘れて欲しいと伝えられるのだった。
 これまで明石さん以外の女性には全く相手にされていなかった「私」が突然3人の女性との約束に苦しむとかどうなってるんだ、と思ったら複雑な事情付きだった。羽貫さんが付き合ってるんだか付き合ってないんだかわからない相手というのは樋口師匠のことなわけで、それを考えるとジョニーに身を委ねなくてよかったとは思うけれど、完全に切り上げるタイミングをミスってしまってるねえ。よくもあの緊急時にトイレに駆け込めたなあと。
 で、「私」が3つのサークルを掛け持っている裏で、明石さんはどこにいたんだろう。

#05 ソフトボールサークル「ほんわか」

 数あるサークルからソフトボールサークル「ほんわか」を選んだ「私」。いい人ばかりの「ほんわか」でも、発言で周囲を引かせてしまう「私」が小津と仲良くなるのに時間はかからなかった。「ほんわか」の母体は、とある健康食品会社であり、そこの健康食品を大量に買うとサークル内の地位が上がるというシステムになっていた。健康食品会社社長の娘であり、「ほんわか」の広告塔でもある小日向さんに一目惚れした「私」は食品を買いまくって最高ランクまで上り詰め、幹部だけが呼ばれるという本社での集会に参加する。それは、まるで自己啓発セミナーであり、ついていけない私は教育係に目を付けられてしまう。しかし、間一髪、小日向さんの父親が終末に向けて作っていた方舟が奪取されるという事件が起こり、その隙に私は逃げ出すことに成功する。
 「キューピッド」のときに何度か小津がつついていた、1年の時に「私」がふられた小日向さんというのはコレか。今回は「私」が小日向さんに目を奪われていたせいで、まったく明石さんが出てこなかった。実に不満である。これまでのサークルはともかく、「ほんわか」では成功してはいけない気がしてならないよ。
 そういえば、今回のラスト近くで、「私」の部屋の窓からひげもじゃになった「私」が入ってこようとしていたが、かつて平行世界に同一の「私」が登場したことはない。「私」そっくりの何かだったのか、平行世界の残滓なのか…。

#04 弟子求ム

 「私」は数あるサークルから何を選ぼうかと悩んでいたが、なぜか樋口師匠の弟子になることに。大学8回生である師匠は図書館の本を返さないことから図書館警察に追われていたりする変な人だが、最もヘンなのは「自虐的代理代理戦争」の当事者であるということ。戦争の相手は城ヶ崎先輩であり、弟子である「私」と小津はあれこれと策略を仕掛けて回っていた。やがて、師匠のお使いをこなした「私」は自虐的代理代理戦争の後継者に選ばれて賀茂大橋へと向かうが、城ヶ崎先輩の選んだ後継者は小津だった。こうして、「私」と小津との泥沼の自虐的代理代理戦争が始まった……。
 明石さんの出番が少ない!と思ったら、今まででもっともヒロインらしい登場だった。今回は特に、10万円が手に入った瞬間の「私」が明石さんとどこかへ逃げたいと具体的に考えていて、その行動力さえあればあちこちの平行世界で幸せになれただろうに…と残念に思います。しかし、師匠の弟子でありながら城ヶ崎のスパイでもあった小津。小津らしいといえばらしいけれど、なんともイヤなヤツです。師匠はいつも城ヶ崎先輩と自虐的代理代理戦争を繰り広げていて、羽貫さんを置いてけぼりにしているということなのか。

#03 サイクリング同好会「ソレイユ」

 「私」は数あるサークルの中からサイクリング同好会「ソレイユ」を選んだ。しかし同好会とは名ばかりのガチ自転車部で、体力のない「私」が活躍することは不可能だった。せめて自転車だけでもパワーアップさせたいと考えた「私」は必死でバイトしてお金を貯め、最強マシンを組み上げた。そんなマシンをちょっと目を離した隙に自転車整理軍によって没収されてしまった「私」は、かつて乗っていたママチャリで「しまなみ杯」に挑戦するが、もちろん結果は惨敗。とぼとぼと京都へ帰ってくるが、そこで明石さんに、バードマン同好会の作った人力飛行機パイロットにスカウトされる。こんな自分でも役に立てる場所があると感動した「私」は、少しでも飛行機を遠くまで飛ばす体力をつけるため、映画サークルを主催する城ヶ崎先輩のもとで鍛練を重ねた。…が、明石さんたちが求めていた人材は筋肉のないひょろっとした「私」であり、鍛え上げた私はもう用無しなのだった。そんなとき、自転車整理軍が人力飛行機に目をつけた。蹴上のインクラインを舞台に争奪戦が行われた結果、飛行機は船台ごと落ちていく。私はなんとか乗り込んで操縦しようとしたが、飛行機は漕ぐタイプではなく、グライダーだった……。
 何をやってもうまくいかない「私」だが、今回の空回りっぷりは泣ける。ソレイユで小津と出会わなかった(ファーストコンタクトでありワーストコンタクト)のは良かったのだが、その結果小津は「私」と関係のないところで自転車整理軍として暗躍、最後には明石さんに迷惑をかけるハメに。しかし明石さんって何でもできるんだな……なぜ「私」なんかを気にするんだろう。「私」が少しでも明石さんに対して積極的に行動できたのって「キューピッド」での賀茂大橋の一件だけ?だとすれば、「頑張った」と自分を褒めていたのも分かる気がする。

#02 映画サークル「みそぎ」

 「私」は数あるサークルの中から映画サークル「みそぎ」を選んだ。しかし、「みそぎ」は城ヶ崎先輩を頂点としたカースト制度が敷かれており、「私」はその最下層に追いやられてしまう。カーストの頂点であり、独裁者でもある城ヶ崎先輩に対して「私」が何を言おうと届くわけがない。そこで、「私」は小津と組んで先輩の秘密を収集、作品上映会でフィルムを差し替えて上映することにするが、小津のせいでまたも状況はヘンな方向へ。
 何がすごいかって、城ヶ崎先輩がおっぱい星人であり、ラブドールだけを愛する人であり、潔癖症でマザコンというお方だということ。これだけ強烈なキャラクターというのはそうそういないよ。「もしもあの時に違うサークルを選んでいたら」という可能性の世界、つまりエンドレスエイトな世界ですかねえ。

#01 テニスサークル「キューピット」

 大学3回生の「私」は、入学当初に夢見た薔薇色のキャンパスライフとはかけ離れた無意義な生活を過ごしていた。「私」は楽しい学生生活を送れる者と信じて、数あるサークルの中からテニスサークル「キューピット」を選んだ。しかし、もともと体育会系の素養がない「私」が馴染めるわけもなく、居場所をなくしていき、やがて同じようにサークルに馴染んでいなかった小津と出会ってしまう。「私」と小津は、サークルの内外構わず人の恋路を邪魔しては赤い糸を切って回る「黒いキューピッド」として名を轟かせることになる。そんなとき、下鴨神社糺の森にあるラーメン屋で”縁結びの神”を名のる男と出会う。彼は、「私」の後輩で変人である「私」を唯一理解してくれる明石さんを、「私」か小津のどちらかと縁結びする予定だという。最初は鼻で笑っていた「私」だが、この2年間を後悔し、明石さんと自分を結ぶように頼む。そうして、五山送り火の夜、「私」は賀茂大橋で明石さんに声をかけることに……。
 湯浅政明らしい独特の演出が、この奇妙な物語にビビッと嵌っている気がする。「私」を演じる浅沼晋太郎は、福山潤神谷浩史でも替えが効きそうに感じるけれど、そこまで個性が強烈じゃないのが「私」らしいかも。不気味なキーキャラクター・小津も吉野裕行が怪演しているし、何を考えているのかわからないヒロイン・明石さんは坂本真綾がバッチリはまってる。原作もきっと面白いのだろうし、それをうまく演出して面白味を引き出しているのでは。